工具徒然 vol.01『ビリー隊長』

 遠い昔、うちのチビと買い物に出掛けると、デッサン人形を欲しがったので買ってやったことがありました。


 デッサン人形とは、画家やイラストレーター・漫画家たちが、ニンゲンの動きを知るために様々なポージング見本をとることができる人形です。

 また、同じ時期に日本中で、強制的に筋肉をつけ脂肪燃焼を促す軍隊式トレーニングプログラムが大流行していました。その流行りに安易に乗った結果、デッサン人形のファーストネームはビリーに決定。勢いそのままに、チビの任命によってビリーは我が家を統率する隊長職にも就任し、たちまち家庭内ヒエラルキー上位に君臨しましたそして、ワタシはビリー隊長の世話係を申し伝えられたのです。

 朝起きると、まず隊長の華奢な球体関節をそろりと動かして、前日と異なるポージングを取っていただく仕事が待っています。チビが気に入るまで、趣向を凝らした立ち姿を披露。
 なるほど、動きが制限される球体関節しか持ち合わせていないとはいえ、隊長職に就くほどの歴戦の猛者は、どのような理不尽なポーズ要求でも呑み込む度量がありました。

 しかし、そんな日々も長くは続かず、本家ビリーブームが下火になるにつれ、隊長がポーズを変える頻度も少なくなりました。最後は敬礼ポーズのまま職務を全う。いつしか、押し入れの奥へと隠居されました。


 話はがらっと変わりますが、ロボットアニメの金字塔といえば機動戦士ガンダム。その壮大なストーリーは広がる一方となり、今もなお宇宙世紀サーガで歴史を刻んでおります。

 到底、子供向けとは思えない重厚な世界観が下敷きされた結果、放映当初の視聴率は振るわないままでした。メインスポンサーを務めていた玩具メーカーの倒産という憂き目にも遭い、これはもう期待外れの結果に終わるかと思われていたようです。

 しかし、かの有名な玩具メーカー「バンダイ」がスポンサードを申し出ることで風向きが変わります
 登場するロボット(モビルスーツ)のプラモデルを放送終了間際に発売開始。
量産型や〇〇専用、水陸両用といった現実の軍隊さながらのリアルなロボット路線が人気を博しました。それに伴い、宇宙世紀に対する理解も深まり、またたく間に一大ムーブメントとなっていったのです。

 しかしながら、そのガンプラに多少なり違和感を覚えた人も多いのではないでしょうか。そう、劇中における有名なポーズを再現することがまったく出来なかったのです。 

 コブラツイストまで再現できなくとも、銃を両手で構えるポーズ、ビームサーベルを振り回すポーズをさせることもままならない代物。アニメ好きの間ではアニメロボ画、アニメ関節と呼ばれていますが、ガンプラの動きはブリキのオモチャと同じく可動域は極端に狭かったのでした。
 模型雑誌を賑わすモデラーは、いかに劇中のポーズを再現するかに苦心されていて、より違和感なく工夫・改造が施されたガンプラが称賛と羨望を浴びていたことを覚えています。

 そんなガンプラに、ビリー隊長のような球体関節が採用されたきっかけがあります。「機動戦士ガンダムサンダーボルト」に登場する主役機・アトラスガンダムの出現です。
 このアトラスガンダムは、人体を彷彿とさせる脊髄や球体関節を採用することで地上戦や水中戦に特化した試作機という設定でした。物語の展開上、一代かぎりで役目を終えてしまいましたが、ガンプラの歴史・球体関節の歴史においては非常に大きな役割を担ったとも言えるのではないでしょうか。

 

 それから何年経ったことでしょう、今、私の手元には「コーケン製インパクト用ダブルジョイント」があります
 これを手にした瞬間、「球体関節だ」と思いました。チビがチビだったあの頃、ビリー隊長との思い出が鮮明にフラッシュバックしてきたのです。

 世界中のエンジニアから、町工場のおじさんまで「ソケットはコーケンに尽きる」とおっしゃる方がたくさんいます。

 ソケットレンチ専門メーカーであるコーケン(株式会社山下工業研究所)は、「ソケットレンチは、それら単体では作業のできない不完全な工具です。しかしながら、ボルトに接するソケットと駆動するハンドル、そのほかのアタッチメント類と使用することにより、無限大ともいえる組み合わせが可能となり、様々な作業に柔軟に対応する万能工具」と謳われています。

 そんな現場からの評価も絶大な、コーケン製の球体関節(ジョイント)が、悪かろうはずがありません。
 2つの球体関節をもつことで曲がりくねった狭いスペースにソケットを差し込むことができます。製品説明欄にあるユニバーサルジョイント、ボールロック機構、独自リターン機構、といったメカメカしい言葉も男心をそそるダンディズムにあふれています。

 ビリー隊長の腕に仕込んでサイコガン、ガンプラの足に仕込んでバーニアの再現、はたまた北欧に棲む海の怪物クラーケンをスチームパンク調に仕立ててみる等々、ハードコアでナイトメアな使い方に至るまで妄想が広がります。

「コーケン製インパクト用ダブルジョイント」、まさにあらゆる場面に有効です。こちら、エヒメマシンで絶賛くねくね販売中!!

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