ご無沙汰しております、新人スタッフのヤマモトです。
まだまだ、工具のプロと胸を張って自己紹介できない初心者ですが、先輩社員に教えてもらいながら記事を書いております。
前回は「木材の基本」について調べましたが、今回のテーマは「トルクレンチ」です。
使ったことがない方でも「レンチか.....ボルトやナットを締めるための工具だろうな」という想像はつくかもしれません。しかし、トルクレンチにはそれ以外にも重要な役目があります。
トルクレンチとは?
トルクレンチは、ボルトやナットを正しい強さ・適切なトルクで締めることができる工具です。
どのような場面で活躍するのか、詳しく解説していきます。
トルクレンチを使う理由
ボルトやナットは強く締めるほど安心と思われている方もいるのではないでしょうか。しかし、それぞれのボルトやナットには締める強さの適正値が決まっているのです。
適正値に対して締める強さが強すぎると、ボルトの頭をなめてしまったり、ボルトがねじ切れてしまいます。かと言って、締めすぎないように意識した結果、適正値より緩く締めてしまうのも危険です。
このような事態を避けるためにも、ボルトやナットを適切な強さで締めることが重要なのです。
そこでトルクレンチの出番。適正なトルク値での締め付け作業が可能になります。
適正トルク値で締めることができれば、部品の劣化も防ぎ長持ちして使えます。
そもそも、「トルク」って何だろう?
ここでひとつ問題です。トルクレンチの「トルク」とはどういう意味かご存知でしょうか?
答えは、「回転させる力の強さ」のことです。そして、レンチであれば「締める力」のことになります。「締める力を測定できるレンチ=トルクレンチ」ということです。
単位は N・m(ニュートンメートル)で表されます。「力と長さ」で求められるものなのですね。
ちなみに車やバイクのスペックにトルクという項目がありますが、「クランクシャフトを回転させる力」のことを指していて、加速力に関係してきます。
トルクレンチの種類は大きく分けると2種類
トルクレンチは、大きく分けて「シグナル式」と「直読式」の2種類あります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
①シグナル式
指定したトルク値を超えると、カチッという音や軽い振動で知らせてくれるのがシグナル式です。いちいち目盛りを見る必要がないため、効率よく作業が進みます。
シグナル式のトルクレンチをさらに分類すると、「プレセット型」と「単能型」に分けられます。
プレセット型
連続作業の中でも様々なボルトやナットがあり、トルク値を変えないといけない作業に向いています。
一般的に広く普及しているトルクレンチで、一本持っておけば色々な作業のときに使える品物です。
単能型
プレセット型と比べ安価なこともあり、ご自身の作業内容に合わせて選んでいただければと思います。
②直読式 トルクレンチ
直接目盛りでトルク値を確認できるのが直読式のトルクレンチです。検査・測定に用いられることも多いタイプです。
直読式のトルクレンチをさらに分類すると、「プレート型」と「ダイヤル式」に分けられます。
プレート型
アナログの目盛りと針でトルク値を表示するトルクレンチです。設定値に達したことを知らせていくれる機能はなく、目盛りを目視しながら作業をします。
直読式のトルクレンチの中では構造が単純で低単価です。しかし、一人で目盛りを見ながらボルトやナットを締めるにはコツが入ります。
また、真正面から読み取る必要があるため、様々な角度で作業をするのには向いていません。
【参考商品:トーニチ プレート形トルクレンチ F280N】
ダイヤル型
中央についたダイヤルの目盛りでトルク値を表示するトルクレンチです。ダイヤル型には目盛りを指し示す針が2つ付いていることが多く、ひとつは置き針というものです。
置き針のあるダイヤル型であれば作業の途中で力を緩めた場合でも、置き針がトルク値を指し示したままにしくれるため、どこまで締められたままかを確認できます。
締めるときだけではなく、すでに締め付けたボルトが「どれくらいで締まっているのか?」を確認するときに便利です。
【参考商品:トーニチ ダイヤル型トルクレンチ DB12N4-S】
シグナル式と直読式を合わせたデジタル型もあります
シグナル式と直読式の両方の良いとこ取りをしたのが、デジタル型のトルクレンチです。
センサーで測定することにより、トルク値をデジタル表示しています。設定した値に達すると音や光で知らせてくれます。
アナログタイプと比べ精度の高いものが多いようです。また、測定結果を保存できるメモリ機能やデータをIT機器に転送できる商品もあります。
デジタル表示で確認し管理できることは、初心者でもわかり易いのではないでしょうか。
【参考商品:KTC デジタルトルクレンチ デジラチェ GEK030-C3A】
外付け型の商品も
お手持ちのラチェットハンドル、T型ハンドルなどに取り付けて使う外付けタイプのものもあります。また、デジタル型だけでなくプレセット型もあります。
外付け型の良いところは、測定する部品や場所によって測定しやすい工具を選べることです。
【参考商品:KTC TORQULE(トルクル)GNA010-02 ※スマホやタブレットと連携しトルク管理も可能】
トルクレンチの選び方!測定範囲と用途で選ぶ
トルクレンチの種類を色々とお伝えしてきましたが、ここからはトルクレンチの選び方について見ていきましょう。
測定範囲で選ぶ
まずはトルク値の設定範囲を確認しましょう。
ポイントは、測りたいトルク値がトルクレンチの最大トルク値の70%〜80%ぐらいになるようにすることです。最大トルク値に近いものを測定してしまうと、トルクレンチにかかる負荷が大きく、故障の原因につながるためです。
たとえば、100N・mのトルク値を測りたいなら、135N・m が最大トルク値のトルクレンチを選ぶようにしてください。
適正トルク値の確認方法に関しては、商品の説明書をご確認ください。
また、参考値ではございますが、下記のページをご参照いただければと存じます。
参照:【KTC公式サイト】ねじの呼びと工具のサイズ・降伏締付けトルク参考値
用途で選ぶ
どういった用途で使うかによって、どんなトルクレンチを選ぶべきかは変わってきます。
たとえば、先端がソケットになっているトルクレンチが多いのですが、ソケットでは対応できない部品に使いたい場合も。
そんなときは、先端がモンキータイプやスパナタイプになっているトルクレンチがオススメです。
ひとつの用途に限定せず、1本のトルクレンチを多種多様なシーンで活用したい方なら、先端部分を差し替えることができるタイプのアイテムを選ぶとよいでしょう。
また、差込角の大きさには注意しましょう。
一般的なソケットのサイズ
- 6.3sq.(6.3mm , 1/4インチ)
- 9.5sq.(9.5mm , 3/8インチ)
- 12.7sq.(12.7mm , 1/2インチ)
- 19.0sq.(19.0mm , 3/4インチ)
- 25.4sq.(25.4mm , 4/4インチ)
右向きか、左向きかも重要
また、締める向きにも注意しましょう。自転車の左ペダル部などは左回りのネジが使われており、右回りだけにしか対応しないトルクレンチでは測定ができません。
もし左向きのネジにも対応したい場合は、両方に対応しているトルクレンチを選びましょう。
トルクレンチを使用するときの注意点
トルクレンチを使用するときにはいくつかの注意点があります。
緩めるときに使わない
トルクレンチはボルトやナットを緩めるときには使わないようにしましょう。トルクレンチのほとんどは右回転にしか対応していないためです。
緩める作業に使ってしまうと、トルクレンチ自体に負担がかかり、故障の原因になる恐れがあります。
左向きに対応しているトルクレンチであったとしても、ネジ締めを想定して作られているわけではないため、絶対に緩め作業には使わないようにしましょう。
決められた場所以外を握って締めつけ作業をしない
トルクレンチには必ず握る場所が指定されています。それ以外のところを持って締めつけ作業をすると、設定したトルク値にならないため注意してください。
持つ場所だけでなく、正しい持ち方も意識してご使用ください。
二度締めをしない
プリセット型の場合、カチッと反応した後に何度も繰り返すのはやめておきましょう。繰り返すほど必要以上の力が加わり、設定値を超える恐れがあります。
衝撃を与えない
トルクレンチは精度が大切な測定工具です。高いところから落としたり、投げ捨てたりなどして衝撃を与えないようにしましょう。
長期間放置しない
トルクレンチを使い終わったら、設定トルクをリセットし、高温、多湿、ほこりがあるところを避け保管しておくようにしてください。
なるべく付属されたケースに入れて保管し、定期的にメンテナンスをする必要があります。そして、1年間に1回を目安に、トルクレンチテスタやトルクチェッカーを利用して精度が落ちていないか校正(点検)しましょう。
また、校正・修理はメーカーごとに有償で行っております。
まとめ
- トルクレンチとはネジやナットを正しいトルク値で締めるための工具
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トルク値の確認方法によって「シグナル式」「直読式」「デジタル式」の基本2種類+「デジタル式」に分かれる
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用途と測定でトルクレンチは選ぶ
自動車業界などだけではなく、様々な業界の現場で活躍する定番アイテムです。これまで直感でトルク管理をされていた方も、ぜひ試していただきたいと思います。
以上、新人スタッフのヤマモトでした。