普段目にする機会も少ない海外メーカー(ブランド)の工具は、それぞれが「どんな特徴を持っているのか」といった基本的な情報もあまり知られていません。

そこで、今回の記事では海外の人気メーカーの基本情報を紹介していきます。当店で取り扱っているメーカーに限りますが、この記事を入口として、各商品ページの撮影画像と合わせてチェックしていただければ、ブランドイメージがより掴みやすくなると思います!

STAHLWILLE (スタビレー)

STAHLWILLE (スタビレー)

1862年創業、ドイツの老舗工具メーカーです。

「made in Germany」という言葉が、世界中で品質保証の代名詞として使われ始めるよりずっと前から、クオリティの高い開発・生産・技術力を発揮し続けてきた歴史があります。

最新の製造方法と素材の使用を追求し続けるだけでなく、徹底した品質管理と顧客からのフィードバックも取り入れることで、いつの時代もユーザーが必要とするイノベーションを生み出しています

代表製品はトルクレンチヨーロッパで初めてトルクレンチを製造したメーカーでもあり、現在はドイツの公的機関PTBよりISO17025の認証を取得している数少ないメーカーです。

最先端にして、最高品質。ユーザーは、自動車、航空、造船、化学・エネルギー業界にまで至ります。安全性が人の命に直結する業界から支持を受けている工具メーカーとして、長年築かれてきた信頼は揺るぎないものとなっています。

KNIPEX (クニペックス)

KNIPEX (クニペックス)

1882年創業、ドイツの工具メーカーです。前述のスタビレー創業から20年経ちますが、こちらも100年以上の歴史を持つ老舗と呼ぶにふさわしいメーカーのひとつです。

品質を追求するため、鍛造用の金型の段階から社内にて製造し、最高の材料を用いています。その結果、1998年にはISO9001にも認定されています。そして、プライヤー専門メーカーとして実績を築いてきたことで、「握りものならクニペックス」とこだわられるファンも多くいます。

そして、これまでの実績に留まることなく常に既存製品の改良と新製品の開発の両方に注力。今ではラインアップが、デザイン数で100種類以上、総商品点数は1,000点以上に及んいます。

こうした努力が電気、機械、建設、工事、各種整備分野のユーザーに支持されており、現在は全世界の30以上の代理店を通じて各国のユーザーに提供されているメーカーです。

Wera (ヴェラ)

Wera (ヴェラ)

1936年、ドイツで創業された工具メーカーです。

ドライバーをはじめとするハンドツールの世界的メーカーとして、現在では生産の拠点をチェコに移し、ドイツでは営業・開発などの部門を残して活動しています。

ドライバー専業メーカーとしての経験をベースに、最近ではレンチやラチェットなど新しい分野での製品開発にも積極的で、今では3000点を超える工具の設計と製造を行っています。また、ドライバーの先端に施した、ダイヤモンドチップ、レーザーチップなどの滑り止め加工に関しては、すでに日本国内でも評判となっています。

人間工学に基づく独自のデザインが特長で、握りやすさや耐久性を追求した製品は高い評価を獲得、特許も取得しています。

優れたデザインは数々の国際的な賞を獲得しており、世界各国で幅広く愛用されています。最近では「Be A Tool Rebel(工具愛好家になろう)」というスローガンを掲げており、より身近で愛着の湧く存在にもなっていますね。

HAZET (ハゼット)

HAZET (ハゼット)

1868年ドイツで、小さな鍛冶屋を生業としていたHermann ZerverがHAZET-WERK社を設立しました。それから150年以上にわたり、工業、貿易、自動車工学、航空学用の標準工具および特殊工具の開発・生産に携わってきました

プーラーからプライヤー、自動車メーカー向けの特殊工具、トルクツール、「Assistent」ブランドのツールトロリーまで、今では5,500種類を超えるラインナップを誇っています。

HAZETの鍛造は未だに職人の高い技量で行われています。それに加え、ドイツの高品質な鉄を使い、厳格な品質管理のもとでひとつずつ丁寧に生み出されていく製品たち。手にとるだけでわかる強靭な美しさは、長い歴史を経ても色褪せることなく、その価値観は多くの人に伝承されてきました。その結果として、多くの製品は「iF DESIGN AWARD」や「Red Dot Design Award」を受賞しています。

また、これまでの活動実績やその革新性において「Top employers Germany (ドイツで最も先進的な雇用主)」「Top 100 most innovative medium-sized companies (ドイツ国内で最も革新的な中堅企業トップ100社)」に選出されるなど、今もなお企業としての評価も高いメーカーとなっています。

SIGNET (シグネット)

SIGNET (シグネット)

1990年創業、カナダの工具メーカーです。工具メーカーとしては新しい企業になります。

「SIGNAL NETWORK」という”ブランドの魅力を世界に広げる”といったコンセプトを元に、ブランドネームが付けられました。そして、創業から4半世紀の間、少しずつラインナップを拡充させながら成長を遂げ、現在ではその数720アイテムに迫ります。

発展の要因は、以下の3つが考えられます。
・コストパフォーマンスが高く機能性に優れていること
・品質が世界の規格以上を保持していること
・ソケット、コンビネーションレンチ、ギアレンチ等には美しいミラー仕上げを施しデザイン性も重視していること


これらを可能にしているのは、「工場を持たないメーカーとして、製品レンジごとに高品質な製品を生産できる優良な工場との連携により、共通のブランドで展開している」という方針によるものです。確かな連携先の工場選定によって、今後も規模拡大とブランドバリューが高まっていくであろう急成長中のメーカーです。

PB SWISS TOOLS
(ピービースイスツール)

PB SWISS TOOLS (ピービースイスツール)

1878年創業のスイスを代表するハンドツールメーカーです。絶対の品質、精度を誇り、農耕機具を生産するメーカーとして誕生したPB社は、1940年代からドライバーのメーカーとして本格的にスタートしました。

1950年代にヨーロッパ初となるプラスチック射出のグリップを採用したドライバーを発表し、その後1987年にはPB社ドライバーの代名詞とも呼ぶことができるマルチクラフトグリップドライバーを発売。そして、2001年にはスイスグリップドライバーを発売するなど、次々とヒット製品を排出していきます。

現在、約3,000種類、年間約1,200万個ものハンドツールと医療機器の全てを、スイス国内の工場で製造しています。そして、品質の追求と環境への配慮、競争力のある価格体系等をモットーに製造された製品は、ドイツ・日本・オランダ・イタリアをはじめ、世界70ヶ国以上の国々へ輸出されています。

BAHCO (バーコ)

BAHCO (バーコ)

1862年、ゴラン・フレドリック・ゴランソンがHögbo Stål 社およびJernwerks AB社をスウェーデンで創立し、ベッセマー法の先駆者として最高品質の鋼を生産しました。この鋼を使用した釣り針を製造してきた経験から、初めてソーブレードの生産を開始

1892年には最初の調整式スパナの特許を取得、これがモンキーレンチの原型となっています

1916年、Enköpings Mekaniska Verkstad社全体を買収し、この会社名を略語にした会社名としたことで、Bahco社としてその名が知られるようになりました。

その後も、バイメタルハックソーブレードの開発や、Sandflex®の導入が金属切削/切断ブレード技術における新時代の先駆けとなるなど、独自の強みを活かした製品を続々と発表していきます。

また、2013年にはツール管理システムコンフィギュレータが技術革新で銀メダルを獲得するなど、DX時代においても業界の先頭を走るランナーとして存在感を示しているメーカーです。

IRWIN (アーウィン、
旧アメリカンツールズ)

IRWIN (アーウィン、旧アメリカンツールズ)

1885年に木工ビットを考案・開発したチャールズ・アーウィンと、1924年にバイスグリップを発明したウィリアム・ピーターセンを起点とし、100年を超える長い歴史を持つ、アメリカのグローバルブランドです。

プロフェッショナルユーザーからの幅広い要望に応える為、バイスグリップをはじめとする世界中で認められたツールブランドがアーウィンツールズにより統合され、今日では世界規模のハンドツール及び電動工具アクセサリーのメーカーとして、各国に高品質な製品を届けています。

milwaukee
 (ミルウォーキー)

milwaukee (ミルウォーキー)

1924年にアメリカのウィスコンシン州ミルウォーキーで創業されたメーカーで、世界中のプロユーザー向けの高耐久性の電動工具、アクセサリー、手工具を製造する業界屈指のブランドです。

長い歴史の始まりは、世界で初めて自動車の大量生産を実現させたヘンリー・フォードのいた時代にまで遡ります。創設者の一人ピーターセンは、フォードからの依頼によって、1/4インチサイズの電動ドリルを製造(最終的にホールシューターの開発という形で実現)。この製品はフォードに心から歓迎されたそうです。

その後の発展も留まることなく、1994年にはアメリカ本土において初めてISO9000を取得した電動工具ブランドになりました。そして、2005年から世界初となるV28/28Vリチウム電池を搭載する電動工具シリーズを展開。2008年からはM12/12V 、M18/18Vリチウムシリーズを発売するなど、汎用性の高い商品ラインナップで幅広い層から人気を博しています。

母国アメリカをはじめとして海外では人気ブランドのミルウォーキーですが、日本に進出してきたのは2021年4月と最近のこと。ツールボックスシリーズ”PACKOUT”は、その耐久性・防水性・防塵性・拡張性に優れているだけでなく、デザイン性にも注目が集まっています。

BOSCH (ボッシュ)

BOSCH (ボッシュ)

1886年、創業者ロバート・ボッシュは、ドイツのシュトゥットガルトに「精密機器と電気技術作業場」を設立しました。シュツットガルトにはベンツ(ダイムラー)、ポルシェといった世界的な自動車メーカーの本社があり、そういった土壌でボッシュも製品の性能を磨き上げてきました。

1902年に公開されたスパークプラグを装備したマグネトー式高圧点火システムによって、ボッシュが世界屈指の自動車部品サプライヤーとなる道を切り開きました。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発。ドイツの自動車産業に危機をもたらしました。

戦争の影響はボッシュにとっても大きく、終戦後、自動車部品サプライヤーとは別の戦略を模索し始めます。そこで生まれたのが電動工具です。

1928年、Forfex電動バリカンを発表。1932年には、新製品となるハンマードリルを発表。このハンマードリルは打撃と回転を同時に行うことのできる初の電動ドリルで、建設現場では作業のスピードが格段に増し、その快適性に使用者たちは釘付けになりました。

そして、1990年から近年にかけてはグローバリゼーションの到来です。2001年、ボッシュは、産業技術の専門企業Mannesmann Rexrothを買収。 2003年には、Buderus AGを買収するなど、電気通信セクションを拡大させていきます。

自動車部品サプライヤーから始まったその歴史は、電動工具を経て今では自動車産業、IoTの分野にまで広がっています。自動車の街シュツットガルトから誕生したボッシュの工具は、こういった沿革を経て今もなお第一線で使われているのですね。

あとがき

あとがき

今回ご紹介したのは、低価格に特化したメーカーではなく、品質の高いプロユースとしても申し分のない性能を発揮してくれるメーカーばかりです(メーカーごとの価格設定に幅はございます)。

そして、こうして並べてみると、歴史のある会社が多いことがわかるかと思います。これは日本の工具メーカーにも云えることですが、工具の歴史は産業の歴史。産業革命、高度経済成長期を支えてきた屈強な精神力と努力、実直に積み重ねてきた技術力、時代の変化に対応してきた柔軟性。それらを備え、今もなお世代を超えたユーザーから愛されているのだと感じます。

また、今回ご紹介した中では新興の部類に入るSIGNETは、自社工場を持たないといった革新的な手法を採用し成長を遂げています。これからも、伝統を受け継ぎ進化するメーカーと、新しい風を吹き込むメーカーとの切磋琢磨が繰り広げられ、世界中の工具の歴史の糸は紡がれていくことでしょう。

この記事で、「初めて知ったメーカーがあった」「創立の起源を知ることで印象が変わった(良くなった)」という方がいらっしゃれば、この上なく嬉しいです。最後までご一読いただきありがとうございました。

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