
2021年度のJAF(日本自動車連盟)ロードサービス出動理由トップ3のうち、2位や3位を大きく引き離して、全体の4割を占めるのが「バッテリー上がり」です。
バッテリーチェッカーを使ってバッテリーの破損や劣化を定期的に点検しておけば、突然のバッテリー上がりで立ち往生してしまうリスクを大幅に減らせます。
参考記事「バッテリーチェッカーの最適な選び方」
とはいえ、いくら用心しても、うっかりライト類や室内灯の消し忘れてしまったり、半ドアで室内灯がついたままだったりするとバッテリー上がりになってしまうことも。
そんな時、近くにエンジンがかかる車があればブースターケーブルをつなぎ、電力をお借りすることでエンジンを始動できますが、自力では対応できない上、時間も手間もかかります。
そんな緊急時に役立つのが、ジャンプスターターです。今回は、ジャンプスターターの基本知識に加えて、メーカーの方からのご意見を直接伺いました。
併せてエヒメマシンおすすめの商品もご紹介しますので、長距離ドライブやツーリングへと出かける前に、ぜひチェックしてくださいね。
ジャンプスターターとは?
ジャンプスターターとは?
ジャンプスターターとは、車やバイクのバッテリーが上がってしまった際に、一時的に電力を提供し、エンジンを始動させるための予備電池です。外出先で携帯電話の充電するときによく使うモバイルバッテリーの二輪・四輪版をイメージすると、わかりやすいかもしれません。
ただし、ジャンプスターターにはいくつかタイプがあり、携帯のモバイルバッテリーとほぼ同程度の大きさのものもあれば、1台で1kgを超えるものもあります。
また、いざというときに使い方がわからないと困るため、事前に最低限の使用方法や注意事項は理解しておく必要があります。場合によっては事故や故障の原因になるため、正しい使い方を心掛けましょう。
▼ ジャンプスターターの種類と特徴
▼ ジャンプスターターの種類と特徴
ジャンプスターターを大別すると、リチウムイオン電池タイプとキャパシタタイプの2種類があります。リチウムイオン電池タイプとは、小型のリチウムイオンバッテリーを内蔵しており、事前に充電しておくことでバッテリー上がりの車に電力をチャージできます。
緊急時用のライトが搭載されていたり、携帯電話等が充電できたりと、バッテリー上がり対策の他にも多彩な使い方ができ、しかも比較的安価なため、リチウムイオン電池タイプの方が一般的にはよく用いられます。
リチウムイオン電池タイプの欠点は、放置しておくと自然放電するため、充電量が減ってしまうことです。そのため、必要な時に充電が足りないという事態も起こります。
一方キャパシタタイプとは、内部にバッテリーが入っていない代わりにコンデンサが内蔵されているタイプです。コンデンサには短時間で充電でき、一度に放電できるという性質があります。そのため、事前に充電をする必要がなく、バッテリーに残っている微量の電力を増幅させることでエンジンを始動することができます。
また、内部にバッテリーを内蔵していないため、リチウムイオン電池タイプに比べると火災リスクが少なく、安全性が高いといえます。ただし、バッテリー上がり以外の用途には使えず、また導入コストも高めです。
それぞれの特徴を以下の表にまとめました。

▼ ジャンプスターターはどう使う?ケーブルの正しいつなぎ方
▼ ジャンプスターターはどう使う?
ケーブルの正しいつなぎ方
ジャンプスターターでバッテリーを始動させるときは、以下の3ステップで行います。
1.ジャンピングスターターがほぼ満充電になっているかを確認してから、付属のケーブルを接続する
2.始動させたいバッテリーのプラス端子に赤(プラス)ケーブルをつなぐ
3.エンジンルームのボディアース(塗装されていない金属部)に黒(マイナス)ケーブルをつなぐ
4.エンジンをかける。再始動に成功したら、速やかにジャンプスターターを外す。
このとき、黒いケーブルから先に外すこと
5.エンジンをかけたまま30分程度、そのまま待つ。その後は走行しながら充電を行う
このとき、絶対にやってはいけないことは、プラスとマイナスの逆接続です。これをやってしまうと、車にダメージが及び、最悪の場合、車が完全に動かなくなってしまいます。
大事故の原因になるため、ケーブルの色と接続先は確実にチェックしましょう。
ジャンプスターター選びのポイントをプロに聞こう
ジャンプスターター選びのポイントを
プロに聞こう
2タイプの違いが分かっても、無数にあるジャンプスターターの中から自分に合った商品を選ぶとなると、どうすればいいのか判断に迷ってしまいがちです。
そこで今回は、ジャンプスターターを含む様々なカー用品を手掛けている株式会社カシムラ様から、以下の質問にご回答いただきました。
●ジャンプスターター購入前に、押さえておくべきポイントは?
●リチウムイオン電池タイプとキャパシタタイプ、それぞれ向いている人は?
●カシムラ製ジャンプスターターのセールスポイントを教えていただけるでしょうか?
●ジャンプスターター購入後、使う際や保管時の注意点は?
ーージャンプスターター購入前に、押さえておくべきポイントを教えていただけますか?
購入前に必ず確認しておいていただきたいのが、「始動可能なエンジン排気量」です。ジャンプスターターには、ジャンプスタート可能な排気量がどのくらいか、目安の数値が必ず表記されています。
ご自身が運転している車の排気量よりもその目安の数値が大きい製品を選びましょう。
また、電圧が異なるジャンプスターターを使うと、エンジンが故障してしまう恐れがあります。車に合った電圧の製品を選びましょう。
ーーリチウムイオン電池タイプとキャパシタタイプ、それぞれに向いている人は?
リチウムイオン電池タイプは、「車両のバッテリーが上がった際、すぐにジャンプスタートを行いたい人」に向いています。
なぜかというと、リチウムイオン電池タイプの場合、製品から直接大きな始動電流が出力されるため、製品を車載バッテリーにつなぐだけで、時間がない時でもすぐにジャンプスタートできるからです。
ただし、ジャンプスターターは常に満タン充電されている状態が理想です。そのため放電が進んでしまっていると、本来の性能が発揮できず、ジャンプスタートが行えないこともあります。
その点、たとえば当社のバッテリースターターであれば、全てモバイルバッテリーとしても使用できるため、日常的に充電を行い、いざというときにもお使いいただければと思います。
他方、キャパシタタイプは、「車両のバッテリーが上がった際、ジャンプスタートまである程度時間がかかってもよい人向け」といえるでしょう。
キャパシタタイプのジャンプスターターの場合、放電してしまった車両バッテリーから強制的に電力を吸い取り、100%溜まった時点で一気に放出してエンジンを始動させます。
そのため、放電が進んでいるバッテリーから電力を吸い取る際には、ある程度の時間を要します。製品によっては、1時間近くかかるケースもあるようです。
キャパシタタイプにどのくらいの時間で電気を溜められるかは、その車の放電具合次第です。そのため、所要時間を事前に推し量ることができません。
また、車両バッテリーの劣化が進行していたり、放電し過ぎていたりする場合、エンジンを始動するために必要な電力を吸い取れないことがあります。結果、ジャンプスターターが上手く動作しないケースがあることを頭に入れておきましょう。
ーーカシムラ製ジャンプスターターのセールスポイントを教えていただけますか?
弊社では開発時に製品本体から同梱品に至るまで全てを分解確認し、安全性・性能面の検証を行なってから、量産・販売しています。
また内蔵しているリチウム電池についても、工場での安全確認を行なったものを使用しています。また、販売後のケアについても、専門知識を持つ弊社のサポートが責任もって対応しています。
こういった点もぜひ考慮頂いた上で、適切なジャンプスターターを検討いただければと思います。
ーージャンプスターター購入後、使う際や保管時の注意点はあるでしょうか?
使用する際には、次の3点には特に注意してください。
・1回のジャンプスタートでは3秒以上セルモーターを回さないこと
・再ジャンプスタートまで1分以上間隔を空けること
・セルスタートは3回以上行わないこと
3秒以上セルモーターを回してしまうと、過度な放電により製品本体が加熱・膨張する恐れがあります。
またジャンプスタート直後は、製品本体のリチウム電池に大きな負荷がかかっているため、連続して負荷をかけると、製品寿命を縮めたり、不具合が発生する原因になります。ジャンプスターターを接続して、一度セルを回してもエンジンがかからない場合、次にセルモーターを回すまで、1分以上間隔を空けて頂くようお願いします。
もし 2回ジャンプスタートを試してもエンジンが始動しない場合、バッテリー以外の部分に問題がある可能性があります。無理に何度もジャンプスタートを行うと、製品本体のリチウム電池に大きな負荷がかかってしまいます。ジャンプスタートは2回まで、と覚えておいていただければ幸いです。
なお、 出力電流(A)が大きなジャンプスターターであれば、小さな出力が必要な車に使用しても問題ありません。なぜかというと、ジャンプスターターは常に最大値の電流を出力するわけではなく、車側の要求する電流を出力する仕組みだからです。
製品仕様に記載されている電流値は、出力できる上限のため、ジャンプスタートしたい車の始動電流が記載数値以下であれば問題なく使用できます。
逆に、ジャンプスターターの始動電流より大きな電流が必要な車両には使用しないでください。製品の上限以上の電流を放電するとリチウムバッテリーに大きな負荷がかかり、大変危険です。
▼ ジャンプスターターを適切に保管するためのポイント
▼ ジャンプスターターを適切に保管するため
のポイント
ジャンプスターターを保管する際は、温度変化の激しい場所や炎天下の車内などは避けましょう。特にリチウムイオン電池タイプの場合は、電池の特性上、直射日光が当たらず、温度変化も少ない室内の保管がおすすめです。使用する際に保管場所から持ち出し、使用後、またもとの場所へ戻してください。
またリチウムイオン電池タイプの場合は、できれば月に1度、最長でも半年に1度は充電を行なってください。長期間にわたり充電を行わないと、放電が進み、製品寿命にも影響します。また、いざジャンプスタートを行う際にも、満充電かそれに近い状態でないと、ジャンプスタートが成功しない可能性もあります。
ジャンプスターターとして使用しない間は、モバイルバッテリーとして日常的に使用いただければ定期的な充放電が促進でき、結果としてバッテリー内部の活性化と製品の性能維持につながります。

<取材協力先:株式会社カシムラ>
カー用品や旅行用品など、目的の場所に移「動」し楽しい思い出とともに帰ってくるための一助となる製品を多数開発・販売しているメーカー。YouTubeでの発信にも力を入れている。
公式ホームページ:https://www.kashimura.com/
エヒメマシンおすすめのジャンプスターター6選
エヒメマシン
おすすめのジャンプ スターター6選
最後に、エヒメマシンが選んだおすすめのジャンプスターターを紹介します。リチウムイオン電池タイプとキャパシタタイプ、それぞれピックアップしたので、ぜひチェックしてみてくださいね。
カシムラの「ジャンプスターター モバイルバッテリー KD-151」は、DC12Vの車やバイクに使える携帯性に優れたジャンプスターターです。
本体サイズは143㎜×80㎜×17㎜、しかも本体重量210gと非常に小型かつ計量なので、カバンに入れても邪魔になりません。
スマートフォンやモバイル機器用のモバイルバッテリーとしても使用できるため、普段使いとして定期的に充電・放電が可能。そのため、バッテリーを長持ちさせやすいという利点があります。
ジャンプスタートケーブルと一緒に収納できるソフトケースがついているので、安心して持ち運べますよ。
■リチウムイオン電池タイプのおすすめ
カシムラ ジャンプスターター 7200mAh KD-238
カシムラ ジャンプスターター
7200mAh KD-238
同じくカシムラの「ジャンプスターター 7200mAh KD-238」は、ガソリン車4.7L、ディーゼル車2.7Lまで対応可能なジャンプスターターです。
普段は、スマートフォンやデジタル機器の充電にも使えます。7200mAhと大容量のバッテリーを内蔵しているため、モバイルバッテリーを出先で使う機会が多い人にはぴったりです。
さらに、暗い場所や夜間の作業に便利なホワイトLEDを内蔵しているため、非常時にはライトとしても使えます。ストロボやSOS点滅への切り替えも可能です。
ジャンプスタートケーブルのほか、車両のDC12Vカーソケットから充電するためのDC充電器と充電用ケーブルも付属しています。
付属品と本体をまとめて、ソフトケースに収納しておけば、なくなる心配もありませんね。
■リチウムイオン電池タイプのおすすめ
パワフルジャンプスターター 12V車専用 12V/22Ah JMT-22
JMT-22 パワフルジャンプスターター 12V車専用 12V/22Ah
「JMT-22パワフルジャンプスターター」は自動車やバイクの他、農機や船舶のエンジンスタートにも使用できるジャンプスターターです。
この商品にはメンテナンスフリーの密閉式バッテリーが採用されているため、液漏れの心配がないのも魅力です。ただし、バッテリーを長持ちさせるために、使用後必ずその都度満充電するのをお忘れなく。
夜間や災害時の救援活動に使いやすいよう、ライト機能を搭載。
12V電源として使えるため、レジャーや災害時以外にも、バッテリー交換時のバックアップ電源としても活躍してくれます(一部機種は適用不可)。整備工場などプロユースにもおすすめです。
■キャパシタタイプのおすすめ
Schumacher プロブースター DSR108
Schumacher プロブースター DSR108

ご好評につき、完売いたしました。
「Schumacher プロブースター DSR108」は、バッテリーの発熱や膨張、失火の心配がなく、半永久的に使用可能なキャパシタタイプの製品です。
他車や充電済のバッテリーからクランプ約90秒でチャージが完了。そこから、対象となるバッテリー上がりの車につなげばエンジンスタートできます。
またサージプロテクタ機能を搭載しているため、ジャンプスタート時のサージを吸収し、電子回路も保護してくれます。
対応車両は、80Dバッテリーまで。ディーゼル用グロースターターにも対応しています。
■キャパシタタイプのおすすめ
Schumacher ウルトラキャパシタ ハイブリッドジャンプスターター DSR132
Schumacher DSR132 ウルトラキャパシタ ハイブリッドジャンプスターター

ご好評につき、完売いたしました。
「Schumacher DSR132 ハイブリッドジャンプスターター」は、最大出力1200A、クランキングアンペア900Aの高出力が可能な商品です。
リチウム電池を内蔵させることで、コンデンサーへの充電電源がないときでも、内部の電池からチャージでき、時と場所を選ばずにバッテリー上がりに対処できるようになりました。
(内蔵のリチウム電池はジャンプスタートには使用できません。)
充電状態が液晶パネルに表示されるため、すぐにジャンプスタートできる状態かどうかを一目で確認できる点も非常に便利ですね。
1回の充電あたり始動は1回のみですが、一度でエンジンスタートできない場合も数分で蓄電できるため、再チャレンジ可能です。
■キャパシタタイプのおすすめ
スタートブースター C10-12V 12V車専用スーパーキャパシタ
スタートブースター C10-12V 12V車専用
スーパーキャパシタ
「スタートブースター C10-12V」は、弱ったバッテリーから内部の「電気二重層キャパシタ」へと充電(約2分)し、瞬時に電気エネルギーとして放出できるジャンプスターターです。
この商品は、24V車両で最大3730A、12V車両なら最大4940Aのクランキング電流を実現しており、ほとんどの車のエンジンスタートに対応できます。特殊車両やフォークリフトにも使用できますよ。
内蔵部品の6割以上がスイス国内で作られたスイスメイド商品のため、品質は折り紙付きです。
一回の充電で始動は一回ですが、オルタネーターより電気が戻ってくるためそのまま使用することもできます。ただし、エンジンがかからない場合は一回ごとの充電が必要なので注意しましょう。
ジャンプスターターを用意してバッテリー上がりに備えよう
ジャンプスターターを用意してバッテリー
上がりに備えよう
今回は、株式会社カシムラの担当者の方にもご協力いただき、ジャンプスターターの選び方から扱い方まで徹底解説しました。
土日や繁忙期になるとJAFのロードサービスも混雑するため、いざというときになかなか助けが来ないことも。万が一の時に備えて、ジャンプスターターを事前に用意しておきたいですね。
走行前にバッテリーチェッカーで点検しておけば、さらにばっちり。万全の準備をした上で、ぜひロングドライブを楽しんでくださいね。
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