
夏や冬の長期休み中にしばしば起こる車のトラブル、「バッテリー上がり」。2020年度のJAFのデータによると、出動理由の第1位(約42%・年間88万件)が「バッテリー上がり」だそうです。
特に使う頻度が少ない車の場合、バッテリーの自然放電や寿命切れが原因でバッテリー上がりが起きやすくなります。そんなバッテリー上がりを防ぐために、車のメンテナンスで用いられるのがバッテリーチェッカーです。
車の整備工場であれば必ず置いてあるバッテリーチェッカーですが、実は様々な機種やタイプがあります。そもそもどんな仕組みの装置なのか、機種の選び方やエヒメマシンのおすすめ商品と合わせて取り上げました。
バッテリーチェッカーとは何なのか?
バッテリーチェッカーとは、その名の通りバッテリーの残量を計測する装置です。バッテリーテスターやバッテリー診断機という名称で呼ばれることもあります。
バッテリーチェッカーで検索すると、乾電池などの電池残量を測定する機器と車のバッテリー状態を確認する機器の2種類が出てきます。
この記事内では、後者の「車のバッテリー状態を確認する装置」を取り上げます。
バッテリーチェッカーの原理
そもそもバッテリーチェッカーを使って、私たちはどのようにバッテリーの状態を確認しているのでしょうか。
日本で従来広く行われていた測定方法は、ロードテスト方式と呼ばれています。テストしたいバッテリーに大容量の電流を通して負荷をかけ、その後放電させたときのV(ボルテージ)を測定する方法です。この方法だと、バッテリー表面に残った電気の帯(表面電荷)しか測定できないため、走行によって充電状態が続いた際、弱ったバッテリーも良好だと誤診断してしまうケースがありました。
そこで、新たに生まれたのがコンダクタンス方式です。この方式は、テストしたいバッテリーに対して微弱な電流を送り、そのバッテリーの伝導率(内部抵抗)を測定する手法です。しかも、測定結果そのままではなく、「CCA値(Cold Cranking Ampere:コールドクランキングアンペア)」に置き換えて表示できます。
CCA値とは、バッテリーの始動性能の目安となる数値です。そのバッテリーがどれだけエンジンを始動できるのかを可視化したものであり、CCAの値が大きいほどバッテリーに瞬発力がありエンジンがかかりやすいといえます。
CCAはアメリカで主に使用されていた値ですが、近年、日本でも性能表示として使用されるようになりました。日本の場合は、適格CCA規格がJIS規格をもとに定められています。
コンダクタンス方式の場合、バッテリー極板(セル)表面の伝導率を測ることで内部の劣化も見逃さずに正しくチェックでき、しかもバッテリーに余計な負荷をかけないという利点があります。
また、ロードテスター方式では正確に計測できなかったサルフェ―ションや電極板の劣化も確実に測定できるというメリットがあります。
アナログ式とデジタル式の違い
バッテリーチェッカーの表示形式として、アナログ式とデジタル式の違いがあります。
アナログ式のバッテリーチェッカーの場合は、バッテリー残量が針のメーターで表示されます。バッテリーとチェッカーを接続した際に、メーターの針が止まった位置でバッテリーの状態が確認できる仕様です。
もともとはアナログ式のバッテリーチェッカーが一般的でしたが、最近ではデジタル式のほうがよく使われるようになりました。デジタル式の場合は、数値によってバッテリー状態を見て取れるようになっています。
アナログ式とデジタル式、どちらも基本の使い方は共通です。テスターのクランプの色が赤だとプラス、黒だとマイナスを示しており、それらをバッテリー側のプラスとマイナスにつなげて計測します。
アナログ式とデジタル式どっちがいいの?
価格重視であれば、デジタル式よりアナログ式のほうがお手頃に入手できます。ただし、計測の精度や多角的な診断を行いたい場合は、デジタル式がおすすめです。 価格と機能のバランスを考えた上で、最適なバッテリーチェッカーを選びましょう。
バッテリーチェッカーを選ぶポイント
バッテリーチェッカーを選ぶポイントについて、さらに詳しく見ていきましょう。具体的にチェックしたいポイントは、「形状」「測定項目」「測定レンジ」「測定精度と価格のバランス」の4点です。
形状
バッテリーチェッカーの形状は、一般的な長方形のボックス型からペン型など少し変わったタイプまで様々です。バッテリーに繋ぐ部分も、端子をハサミでつまむクランクタイプや針を接触させるタイプなどがあります。
そのため、車体の構造や使用環境に合わせて、扱いやすい形状を選びましょう。バッテリーと接続する部分は、後付けで好みのタイプと交換できる機種もあります。購入前に付け替えが可能かも確認しておくと安心です。
測定項目
多機能型のバッテリーチェッカーを使うと、電圧や電流、周波数など幅広い数値を測定できます。
車のバッテリーチェックであれば、基本的に電流と電圧だけ計測できれば問題ありません。ただし、たとえばCCA値を計測したいのであれば、それに合った装置を選ぶ必要があります。
次に紹介する測定レンジと合わせて、バッテリーチェッカーで何を測定したいのか明らかにしておきましょう。
測定レンジ
バッテリーチェッカーの測定レンジとは、電圧や電流・電圧の切り替え、周波数の計測などを指します。用途によっては、幅広いレンジに対応できる機種の方がよい場合もあるでしょう。
切り替え方についてもダイヤル式やスイッチ式など、何種類かのタイプがあるため、好みに合わせて選ぶのがおすすめです。
測定精度と価格のバランス
測定項目が多く、かつレンジが広い商品ほど、どうしても価格は高めに設定されています。必要のない項目や測定レンジは切り捨てたほうが、コストパフォーマンスのよいバッテリーチェッカーを購入できるでしょう。
エヒメマシンおすすめのバッテリーチェッカー4選
エヒメマシンおすすめの
バッテリーチェッカー4選
エヒメマシンでもバッテリーチェッカーを複数機種扱っていますが、その中でも特におすすめの商品を4つピックアップいたしました。 それぞれの特徴を把握した上で、最適な商品を選ぶ参考にして頂ければと思います。
大作商事 バッテリー&システムアナライザー DS-5
大作商事バッテリー&システムアナライザー DS-5
大作商事の「バッテリー&システムアナライザーDS-5」は、軽自動車、普通自動車、輸入車、RV車はもちろんのこと、ハイブリッド車やアイドリングストップ車にも対応したバッテリーチェッカーです。
オートバイなど二輪の小型バッテリーや大型建設機械、船舶のエンジン始動用バッテリーにも対応できるため、汎用性に優れています。
測定方法は非常にシンプルで、JISコードまたはCCAの値を選択してから、ボタン一つで計測するだけ。操作に迷う心配はありません。
ディスプレイにバックライトが付いているため、夜間でも見やすい点もメリットです。車両に搭載したまま、バッテリーの良否を即判定できますよ。
DENGEN BT-123D デジタルバッテリーテスター(充電システム診断機能付)
DENGEN BT-123Dデジタルバッテリーテスター
(充電システム診断機能付)
「DENGEN BT-123D デジタルバッテリーテスター」は、ハイブリッド車やアイドリングストップ車には対応していない分、1万円以下というリーズナブルな価格で入手できるバッテリーチェッカーです。
廉価版とはいえ、バッテリーに負荷をかけずにCCA値を測定できる機種なので、バッテリーの合否判定は非常に正確です。しかも、簡単操作で充電システムテストも行うことができるので、使いやすい機種といえます。
本体の裏にはJIS/CCA変換表もついているので、入力するCCA値にも迷いません。オルタネータの充電電圧やバッテリーの合否判定もできますよ。
DENGENの製品なので、説明書や表記はすべて日本語。海外メーカー品のように、表示を上手く読み解けないという心配もありません。
ちなみに、もっと気軽に低コストでバッテリーの消耗を測りたいときは、同じくDENGENの小型比重計SGM-1もおすすめです。
DENGEN デンゲン 小型比重計 SGM-1
ミドトロニクス バッテリーテスター PBT-300
ミドトロニクス バッテリーテスター PBT-300
ハイブリッド車やアイドリングストップ車にいち早く対応したミドトロニクス社のバッテリーチェッカー「PBT-300」。もともと人気が高かったPBT-200の上位機種にあたります。
PBT-200の機能はもちろんのこと、以下のような改良がさらに加えられています。
●1400CCAまでテストできるため、バッテリーサイズの大きなものでも問題なく計測可能
●電気系統テストの結果をより分かりやすく可視化できるよう、ボルテージだけではなくランプ表示も追加
●入力する刻み幅をPBT-200よりさらに細かく改善
コンダクタンス方式を採用しているため、測定精度はお墨付きです。
ミドトロニクス 12Vバイク用バッテリーテスター FBT-50
ミドトロニクス 12Vバイク用バッテリーテスター FBT-50
ミドトロニクスの「12Vバイク用バッテリーテスターFBT-50 」は、バッテリーテスターの中でも二輪用に特化したモデルです。
全世界のモーターサイクルメーカーで愛用されており、コンダクタンス方式を用いた高い測定精度を誇ります。
バイクのバッテリーにはJIS規格が定めた適格CCA規格が存在しませんが、ミドトロニクスでは独自の技術により、JIS規格には則っていないもののCCA値に準ずる値として、レファレンスNo.を採用しています。
そのためバッテリーの状態をより正確に診断することが可能です。
まとめ
バッテリーチェッカーはメーカーや機種により、それぞれ測定項目や測定レンジなど個性があります。たとえば二輪にのみ使用するのであれば、ミドトロニクスのFBT-50を採用するなど、用途に応じて最適な選択肢は異なります。
機能と価格のバランスを考えながら、ぜひベストな機種を選んでみてくださいね。